はじめに
ヤマハのMTシリーズは、2013年に登場して以来、世界中のライダーを魅了し続けているネイキッドバイクのラインナップです。MT は「Master of Torque」の略称で、その名の通り、圧倒的なトルク性能と扱いやすさを両立させたモデルたちです。
都市部での機動性と高速道路での安定性を兼ね備え、日常の足から週末のツーリングまで、幅広い用途に対応するMTシリーズは、ライダーの心を掴んで離さない魅力にあふれています。
MTシリーズのラインナップ
MTシリーズは、排気量別に6つの主要モデルで構成されています:
- MT-10: 997ccのフラッグシップモデル
- MT-09: 888ccのミドルクラス主力モデル
- MT-07: 688ccのバランスの取れた人気モデル
- MT-03: 320ccの入門者向け小型モデル
- MT-25: 249ccのエントリーモデル
- MT-125: 124ccの若年層向けモデル
各モデルは、それぞれのクラスで独自の特徴を持ち、幅広いライダーのニーズに応えています。
MTシリーズの特徴
アグレッシブなデザイン: MTシリーズは「ダークサイド・オブ・ジャパン」というコンセプトのもと、日本の伝統と先進技術を融合させた独特のデザインを採用しています。
高性能エンジン: ヤマハ独自のクロスプレーンコンセプトを採用したエンジンは、低中速域での豊かなトルクと高回転域までのリニアな出力特性を実現。街中での扱いやすさと、ワインディングロードでのスポーティな走りを両立しています。
軽量・コンパクトな車体: アルミニウムフレームの採用などにより、各クラスでトップレベルの軽量化を実現。コンパクトな車体と相まって、優れた取り回しと俊敏な運動性能を提供しています。
各モデルの詳細
- MT-10
997ccの直列4気筒エンジンを搭載し、YZF-R1由来のハイパフォーマンスを誇ります。最高出力は160馬力以上で、電子制御スロットルやトラクションコントロール、クイックシフターなど、最新の電子制御システムを搭載。圧倒的なパワーを安全に扱えるよう設計されています。また、クルーズコントロールやヒーテッドグリップなどの快適装備も充実し、ツーリングにも対応する万能性を持っています。
- MT-09
888ccの3気筒エンジンを搭載し、軽快な走りと豊かなトルクを両立。最高出力は115馬力以上で、クイックシフターやリーンアングルセンサー、さらに6軸IMUを採用した高度な電子制御システムを搭載しています。軽量なアルミニウムフレームと相まって、スポーティーな走行を楽しめます。2021年モデルでは大幅な進化を遂げ、よりシャープなハンドリングと洗練された走りを実現しています。
- MT-07
688ccの並列2気筒エンジンを搭載し、扱いやすさと経済性を両立。最高出力は70馬力以上で、低中速域でのトルクの豊かさが特徴です。軽量なフレームと相まって、初心者からベテランまで幅広いライダーに支持されています。そのコストパフォーマンスの高さから「ベストバイ」として評価され、ストリートからツーリング、さらにはサーキット走行まで幅広く楽しめる万能性を持っています。
- MT-03
320ccの並列2気筒エンジンを搭載し、軽量コンパクトな車体で街乗りに最適。最高出力は40馬力以上で、その軽快な走りと扱いやすさから、初心者やツーキニストに人気があります。LED ヘッドライトや LCD メーターなど、高級感のある装備も特徴です。欧州ではA2ライセンス対応モデルとして人気を集めており、スポーティーな走りを楽しみつつ、日常的な使用にも適しています。
- MT-25
249ccの並列2気筒エンジンを搭載し、軽量コンパクトな車体で初心者にも扱いやすいエントリーモデルです。最高出力は35馬力以上で、その軽快な走りと経済性からアジア市場を中心に人気があります。特に若年層のライダーに支持されており、スポーティなルックスと取り回しの良さを両立。日常の通勤や街乗り、さらには週末のツーリングにも適しています。
- MT-125
124ccの単気筒エンジンを搭載した、MTシリーズの中で最小排気量のモデルです。最高出力は15馬力程度ですが、VVA(可変バルブアクチュエーション)技術により、低回転から高回転まで幅広い領域で力強い走りを実現しています。主にヨーロッパ市場向けに展開され、16歳から乗れる国も多いため、若いライダーの入門機として人気があります。小排気量ながら、MTシリーズの特徴であるアグレッシブなデザインと軽快な走りを継承し、都市部での機動性に優れています。
MTシリーズの進化
MTシリーズは登場以来、継続的な進化を遂げています。
デザイン面では、初期モデルの無骨な印象から、よりシャープで攻撃的なデザインへと変化。LED照明の採用により、視認性と同時にスタイリッシュさも向上しました。
性能面では、エンジン出力の向上だけでなく、電子制御システムの大幅な進化が見られます。最新のMT-09では、6軸IMUを採用し、コーナリング時のABS制御やスライドコントロールなど、高度な電子制御が可能になりました。
また、Y-AMT(ヤマハ・オートマチック・マニュアル・トランスミッション)の導入も注目に値します。これは、クラッチ操作不要で変速可能な半自動トランスミッションシステムで、MT-09 Y-AMTに設定されています。Y-AMTにより、マニュアルトランスミッションの楽しさを維持しつつ、より幅広いライダーがMTシリーズを楽しめるようになりました。
さらに、TFTディスプレイの採用やスマートフォン連携機能の追加など、インターフェースの進化も著しく、ライダーの利便性と安全性を高めています。
ライダーの評価
MTシリーズは、様々なライダーから高い評価を得ています。
実際のオーナーからは、「扱いやすさと爽快感のバランスが絶妙」「街乗りから長距離ツーリングまで幅広く使える」といった声が多く聞かれます。特にMT-07は、初心者からベテランまで幅広い層から支持を得ており、「理想的な中型バイク」と評されることも多いです。
メディアレビューでも、そのバランスの良さと走行性能の高さが高く評価されています。モーターサイクリスト誌では、MT-09が「ミドルクラスの新基準」と絶賛され、サーキットでのハンドリングの良さも高く評価されました。
一方で、一部のモデルでは乗車位置の窮屈さや、高速走行時の風防の不足を指摘する声もあり、これらは今後の改善点として注目されています。
カスタマイズの可能性
MTシリーズは、豊富なアフターパーツが用意されており、カスタマイズの自由度が高いのも特徴です。
人気のカスタマイズパーツには以下のようなものがあります:
- エキゾーストマフラー:音質改善と軽量化
- ハンドル:ライディングポジションの調整
- スクリーン:風防効果の向上
- ステップ:足つき性とコントロール性の向上
- サスペンション:乗り心地と操縦性の向上
また、ヤマハ純正のアクセサリーも充実しており、ソフトバッグやナビゲーションブラケットなど、ツーリング向けのオプションも豊富に用意されています。
カスタムビルダーによる個性的なカスタムも多く見られ、ストリートファイター風やネオレトロ風など、様々なスタイルのカスタムMTが存在します。これらのカスタムバイクは、ショーやSNSで話題を集め、MTシリーズの魅力をさらに広げる役割を果たしています。
MTシリーズの競合モデル
MTシリーズの主な競合モデルには以下のようなものがあります:
- カワサキ Zシリーズ:特に Z900は MT-09と、Z650は MT-07と直接競合
- スズキ GSX-Sシリーズ:GSX-S1000は MT-10と、GSX-S750は MT-09と競合
- ホンダ CBシリーズ:CB1000Rは MT-10と、CB650Rは MT-07と競合
- ドゥカティ モンスター:特にMT-09クラスと競合
- トライアンフ ストリートトリプル:MT-09の強力な競合モデル
これらの競合モデルと比較して、MTシリーズは以下のような特徴で差別化を図っています:
- 独特のデザイン哲学:「ダークサイド・オブ・ジャパン」コンセプトによる個性的な外観
- 幅広いラインナップ:125ccから1000ccまでの豊富なモデル展開
- コストパフォーマンス:特にMT-07は価格と性能のバランスで高い評価
- クロスプレーンエンジン:独特のエンジン特性による魅力的な走行フィール
これらの特徴により、MTシリーズは競合モデルの中でも独自の存在感を放ち、多くのライダーを魅了し続けています。
まとめ
ヤマハMTシリーズは、その独特なデザイン、高い走行性能、そして幅広いラインナップにより、ネイキッドバイク市場で確固たる地位を築いています。街乗りの機動性とスポーティな走りの両立、そして多様なニーズに応える柔軟性が、MTシリーズが多くのライダーに支持される理由となっています。
125ccから1000ccまでの幅広いラインナップは、初心者から熟練ライダーまで、様々な経験レベルのライダーに適したモデルを提供しています。特に、MT-25とMT-125は、若年層や新規ライダーにMTシリーズの魅力を伝える重要な役割を果たしており、将来的により大きな排気量のMTシリーズへのステップアップを促す戦略的な位置づけとなっています。
バイクの楽しさを純粋に追求したMTシリーズは、これからも進化を続け、世界中のライダーの心を掴み続けることでしょう。その独自の魅力と多様性により、MTシリーズは今後も二輪車市場において重要な存在であり続けると予想されます。
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